バッハ:グノー アヴェ・マリア/メルバ、クーベリック
これは、バッハ作曲、グノー編曲の「アヴェ・マリア」で、ソプラノのネリー・メルバとヴァイオリンのヤン・クーベリックのコラボのSP盤である。
このSP盤が発売されたのは今から約90年前、日本で言えば大正時代のことだ。当時、この盤1枚の値段はアメリカで3ドル、日本では7円50銭だった。当時、月給が20円であれば、東京都心にアパートを借りて親子4人が生活できた。そんな時代の7円50銭であるから、いかにレコードの値段が高かったかわかるだろう。よほどのお大尽でなければ、レコードを多数コレクションすることなど不可能だったし、それを再生する蓄音機も1台何百円もして、とても庶民には無理だった。
こんなふうに、音楽が入っているのは片面のみで、反対側には溝はない。両面に音楽が入るようになったのは、電気録音になった1925年頃以降になってからである。
ひょんなことから、このSP盤を引っ張り出してくることになったので、久しぶりにかけてみた。当時の録音方法は電気を使わないラッパ吹き込みというもので、音質はやはり貧しい。しかし、この時代の録音でも、歌ものやヴァイオリンだけはそれなりにちゃんと聴ける。管弦楽などの大編成のものは厳しい。20世紀初頭の大歌手の歌がちゃんと聴けて、しかも復刻CDや復刻LPよりも聴きやすいことに感謝したい。先にヴァイオリンが旋律をひととおり弾いた後でソプラノが登場する。
このSP盤は、アメリカ在住のコレクターから譲っていただいたものだが、1世紀前のものとなるとかなり貴重な文化遺産である。次の世代へきちんと譲り渡すまでの借り物だと思って大事にしたい。
ネリー・メルバ(1861年~1931年)は、オーストラリア生まれの20世紀初頭の名ソプラノ、ヤン・クーベリックは、指揮者のラファエル・クーベリックの父親で、当時の名ヴァイオリニストである。
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