ヴェルディ オテロ/バルビローリ、ニューフィルハーモニア管、マクラッケン、ジョーンズ、F=ディースカウ他
これは、ジョン・バルビローリ晩年のスタジオ録音によるヴェルディ「オテロ」の全曲盤のLPレコードで英国初版盤。
バルビローリは英国の指揮者だが、父はイタリア人で母はフランス人で英国で生まれた。英国人であるがラテン系の血をひいている人である。父と祖父はヴァイオリニストでありスカラ座のオーケストラに所属していた。そして、トスカニーニ/スカラ座による「オテロ」初演の時には、オーケストラピットでヴァイオリンを弾いていたのだそうである。
EMIの「オテロ」のこのLPレコードには、バルビローリ本人による解説が載っている。よほど、「オテロ」に対しての思い入れがあったのであろう。バルビローリは、「オテロ」の音楽の旋律を際立たせ、時には情熱的に音楽を作っているし、指揮とオーケストラはとても良いと思う。
この録音は、不当な冷遇を受けている。たぶん、オテロ役のマクラッケンが弱く感じられるからではないだろうか?オテロは、戦は上手な英雄だが、狡猾な副官に騙され破滅してしまう弱さを持っている。そういう弱さが前面に出ているという視点でマクラッケンの歌を聴けば、マクラッケンもそんなに悪くはない。ジョーンズのデズデモナはとても良い。オテロとの二重唱や柳の歌~アヴェマリアは美しい。
極めつけは、狡猾でずる賢いイヤーゴを歌っているフィッシャー=ディースカウ。この人のイタリアオペラの役は、イタリア的でなくあまり評価できないものが多い。しかし、計算されたイヤーゴという意味では凄いと思うし、そういうふうに聴けば、違和感はない。
このLPレコードは、20年くらい前に同じものを手に入れ、カラヤン/デル=モナコ盤の素晴らしさに遠く及ばないのですぐに手放してしまった。ところが、最近、3枚組¥1000で出ていたので、また買ってしまった。これだけ時が経てば、印象も変わるものだ。
やはり、サー・ジョンは素晴らしい指揮者だ。それが結論。
尚、この盤の音質はすこぶる良い。冒頭の嵐の部分を聴くだけで、それはわかる。CDの方が手軽に聴けるのだが、わざわざLPで聴くのはそういった理由からだ。
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