モーツァルト 交響曲第41番(ジュピター)/ワルター、ウィーンフィル(4枚組SP盤)
世の中は、アナログレコードがブームになっているが、私的にはちょっとしたSP盤がブームになっている。理由は今年発売されたTechnics SL-1200GAEというレコードプレーヤーが78rpmで回すことが出来るのでSP盤の電気再生用に導入して見たところ、今まで14年間使っていたHMV157というアコースティック蓄音機とはまた違った魅力ある再生が出来るので、面白がって手持ちのSP盤を次から次へ聴く様になってしまったのだ。
このモーツァルト 交響曲第41番(ジュピター)/ワルター、ウィーンフィルは、拙宅では電気再生した方が明らかに魅力的に鳴る。特により深い低域が再生出来るようになり、シンフォニーがシンフォニーらしく鳴る様になったからだ。蓄音機のサウンドボックスとホーンの個性で聴かせる弦楽器よりもカートリッジが拾う弦楽器の音のほうがウィーンフィルらしいように聴こえる。
1938年録音の4枚組8面のこの盤は、このように収録されている。
第一楽章 1面~2面 第二楽章 3面~4面
第三楽章 5面~6面途中 第四楽章6面途中~7面
偽の女庭師 序曲 8面
SPレコードでは、モーツァルトの決して長くはない楽章でも、途中で裏返さなければならない。電気再生するならいっその事デジタル化してCDにしてしまった方が聴きやすいと思い、CDRに焼いて作ってしまった。途中の接合部分が若干間延びするが、いちいち裏返しながら7面をかけるよりずっと気持ちよく聴ける。ノイズシェーピングなど一切しておらず、市販のCDよりノイズは多いが、その分、鮮度は保たれていると思う。
巷では、この録音の評価はあまり良くない。音楽評論家の宇野功芳氏は著書「ワルター」や「名指揮者ワルターの名盤駄盤」の中で、「ワルターの指揮が軽すぎ、アンサンブルにも雑な面が目立って必ずしも感心できない」、「解釈としては女性美の極を示した小味なモーツァルト」、「いわゆる女性的なモーツァルトであって、それを突き抜けたジュピターらしい威容は期待できない」などと書いていて、あまり好意的でない評論を展開していたが、私は、晩年のアメリカでの録音の演奏よりもむしろずっと高貴であり、秘めた情熱や強靭さを感じさせ、アンサンブルが見事な素晴らしい演奏だと気付かされ、改めてこのSP盤への思いを新たにした。
ワルターとウィーンフィルの関係は、この録音の後に戦後まで中断される。ナチスの迫害を恐れ、1938年にスイスに逃れたが、翌年、アメリカに亡命したからだ。この録音の1938年は、ワルターとウィーンフィルの関係が恐らく最も良好だった最後の時期だったという事もあって、醸し出される演奏にもそれは現れているように思われるのだ。
このSP盤が気持ちよく聴ける様になっただけで、TechnicsSL-1200GAEというレコードプレーヤーを導入した価値があり充分に元はとったような気分である。
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