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2017年4月21日 (金)

モーツァルト 「フィガロの結婚」全曲/クライバー、ウィーンフィル

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タワーレコードから、エーリッヒ・クライバーの「フィガロの結婚」のSACD/CDハイブリッド盤が発売になった。この音源は、長年の愛聴盤なので速攻手に入れてみた。録音は1955年、モーツァルトの生誕200年の1956年にオリジナル盤がモノラルLPで発売され、1958年にはステレオLP盤が発売された。

歌手はほとんどが当時のウィーン国立歌劇場の団員で固められていて、躍動感と間合いの良さがある、ウィーン的でしなやかな演奏であった。1960年代以降のオペラのレコードは、良い歌手が世界中を飛行機で飛び回っている中をかき集めて録音されたものが多くなるが、この時代はまだそういった事があまり無く、古き良き時代のウィーン的な音楽が聴ける最後の時代だった。また、エーリッヒ・クライバーはこの録音の半年後に亡くなる。エーリッヒ・クライバーが残した唯一のステレオ録音である。

息子のカルロス・クライバーは得意なレパートリーが父と重なる。共に「薔薇の騎士」などは得意にしていたが、父の残したこの名録音があるためなのか、終生「フィガロの結婚」は録音しなかった。

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こちらは、1999年に発売された通常輸入CD。新しく発売されたSACD/CDハイブリッド盤とこのCDのCD層同士を比べてみると、やはり新しくリマスターし直されたSACD/CDハイブリッド盤の方が音質が良い。歌手の声や弦楽器の粒立ちが良くなっている。しかし、その差は大きくない。

私は、LPレコードでもこの録音のものは持っていて、米国ロンドンの初期盤(4枚組)と日本のキングレコードが1967年に発売した4枚組のセットである。

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米国ロンドン盤 中身の盤は英DECCAプレスでステレオ初期盤

英国DECCA SXL2087/90のオリジナル盤はまともなコンディションのものは20万円位するので、高価過ぎて買えない。私の持っているこの米ロンドン盤はレコード盤そのものはオリジナル盤と同じ時代に同じ工場でプレスされたもので、ボックスやリブレットは米国で作られたもの。非常にコンディションが良く、ノイズがほとんど出ない。なので、これを自前でデジタル化している。3枚のCD-Rに焼き同じCDプレーヤーで比べて聴いてみると、若干ノイズは乗るがそれを除けば今回発売になったSACD/CDハイブリッド盤のCD層よりも音が濃くより生々しい感じで、音質的に良いのだ。

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1967年発売の4枚組キング盤。

以前、中古屋でたった千円で売られていたので拾ってみたものだが、コンディションは良くなかなか音質が良い。実はこの盤の方が、英DECCA3枚組の再発LP GOS585-7よりも音質が良い。ただし、上の米ロンドン盤には劣る。日本語対訳の付いた豪華なリブレットが付いている。マトリックスは国内でカットされたもので、輸入メタル原盤を使用したものではない。プレス国の違いよりも本来4枚組だったものが3枚に詰め込まれる方が、このLPレコードの場合には音質的に不利なのだという事なのだろう。

ちなみに、最初に買ったこの録音のLPレコードは、学生時代に昼飯を抜いてまでして手に入れたもので、このジャケットと同じデザインの3枚組のキング後発盤だった。しかし、その後入手した米国ロンドン盤とのあまりの音質の違いによって処分した。後にGOS585-7も買ってみたが、音質的には4枚組のものに比べて良くないのでこれも今は無い。

タワーレコードは、レコード会社と協力して様々な名盤を復刻してくれているが、CD層を聴く限り今回の復刻盤はリマスターの効果が少なく、リマスターが本当に成功しているとは言い難い様に思う。さらに、通常のプラケースに入っていて装填などが貧弱なのが気になる。それなのに価格はDefinition Seriesとほぼ同じだ。これはタワーレコードの責任というよりも、レコード会社のユニバーサルの問題の方が大きいだろうと思う。リマスターや販売戦略がいまいちなのが原因だ。リマスターが下手なら自前でやらず上手いところにマスターを貸し出せ、貧弱な装填のままで高い値段を付けざるを得ないような仕事をするな、と言いたい。

EsotericのSACD/CDハイブリッド盤の三千枚ほどの限定盤がすぐに売り切れてしまい、その後に高価なプレミアムが付くほど中古盤が値上がりしてしまうのは何故なのか?理由は、SACD層もCD層も本当に音質が良くて装填も良いものが多いから。クラシックリスナーが本当に持っていたい、聴きたいと思わせるような内容になっているからだと思う。私からみて、今回購入したSACD/CDハイブリッド盤は残念ながらそこまで魅力のあるものになっていない。

TOWER RECORDSが発売してくれている限定盤の中では、音質的にもコレクターズ・アイテムとしても、持つものにとって素晴らしいものとして最も成功しているのは、TOWER RECORDS Definition Seriesのものだろうと思う。 Definition Seriesは、実質的にEsoteric SACD/CDハイブリッド盤とほぼ同じ人が同じJVCのラボでリマスターしていて音質の良いものが多いし、ハードカバー装填で外装にもEsoteric同様にお金がかかっている。今回のこの盤もDefinition Seriesとして出してもらっていたなら、リマスターももっと上手く、装填も良かっただろうに、と思い残念でならない。


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コメント

私は「フィガロの結婚」大好きなので、ブログを興味深く読ませていただきました。クライバー、ウィーンフィルの「フィガロの結婚」は愛聴しております。私がオペラ好きになったのは、やはりクライバー、ウィーンフィルでドミンゴが主役を演じた「おてろ」で、クライバーの演奏は交響曲、協奏曲なども大好きで愛聴しています。
オペラはライバー、ウィーンフィルでドミンゴが主役を演じた「おてろ」の生演奏を鑑賞してから、その魅力に病みつきになりました。チケットが高いのでなかなか行くのに抵抗がありますが、チケット代も妥当で外国から一流の歌手陣を揃え、指揮者もスペシャリストを読んで、合唱団のレベルも高い新国立劇場の舞台を楽しんでいます。

先日は、『フィガロの結婚』を鑑賞してきました。歌手やオーケストラ、合唱もよかったですが、段ボール箱で四角く囲まれているのですが、周りにあった壁は幕が進むにつれ、象徴的な事件が起こるたびに傾いて壊れていきます。床は傾き内と外の境界がなくなっていきます。何もない空間にモノが積み上げられ、人々の生活の場として生き生きとした空間に変わって行く演出は示唆性の富んでいて面白いと感じました

私は今回は『フィガロの結婚』をホモキの段ボール箱を使った演出と、オーソドックスな演出とで見比べて、ホモキのような奇抜な演出や現代演出のような演出家が主役的な舞台の魅力と問題点を整理してみました。貴兄から見ると違和感を感じるかもしれませんが、オペラにはこんな楽しみ方もあるのかと、見識ある貴兄にのぞいていだけると大変嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただける私も大変勉強になると思っていますので、頃から感謝いたします。。

投稿: dezire  | 2017年4月26日 (水) 04時51分

オペラが数多く録音、記録され始めた20世紀前半頃から今まででも、オペラというのは変わってきていると思います。20世紀中盤まではオペラはまず歌手ありき、で「歌手の時代」でした。それが指揮者による統率の重要性が増し「指揮者の時代」になりました。さらにここ20~30年前からの流れは演出の重要性が増し「演出家の時代」となりました。

これからも奇抜で斬新な演出は益々されるようになるでしょう。同じ演目で似たような演出では何度も観たいとは思わないですから。

奇抜な演出が成功しているものもあれば、顰蹙を買うようなものもあると思います。しかし、重要なのはどのような演出であろうと音楽本来の良さを失わないこと、作曲家の精神を踏み躙らないこと、であると思います。

投稿: 黄金のアンコール | 2017年4月26日 (水) 09時17分

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