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2017年5月12日 (金)

モーツァルト 「魔笛」/クレンペラー、フィルハーモニア管 他

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1964年録音のEMIのクレンペラーの「魔笛」の3枚組LPレコード。「魔笛」の一番の愛聴盤である。台詞が省かれている事が評価が分かれるところだが、歌手が揃っていて「魔笛」を純音楽的に楽しむのに、私的に、こんなに素晴らしい「魔笛」は他に無い。

手元に英国初版盤、第二版盤もあるのだが、この第三版盤のセットはネット・オークションで千円とかなり安かったので入手してみた。ちなみに、この第3版盤は1974年頃から1980年頃まで販売されていた英国盤。恐らく、1970年代に日本に新品で輸入されたもの。アメリカや日本では蓄音機を覗いている犬のマークはビクターの商標なので、ボックスの左上隅の犬ロゴやレーベル面の犬ロゴはエンジェルのシールが貼られて隠されている。少しカビがあったのだが綺麗にクリーニングした所、盤面は非常に綺麗でノイズはほとんど無く、現在新品で手に入る様々なクラシックの輸入LPレコードよりS/Nが良いくらいだった。レーベルの色は黄色。

英国初版盤が一番濃厚な音質で、歌手の声が濃厚に聴ける。第二版盤は濃厚さが減退しその分ワイドレンジになる。この第三版盤は、さらにワイドレンジになり、音場の横へ良く広がるが、全体的に音が細身にはなる。しかし、しなやかさや潤いのある鮮明な音質で、同じ音源の同時期の国内盤よりもずっと良い音質であり、通常CDと比べても音質的には勝っているように感じる。

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これが第二版(1968年頃)のもので、レーベルが金色で犬のマークが切手型のもの。上の第3版のものも、シールを剥がせばこれと同じ四角い切手型の犬のマークがあるはずである。

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これがオリジナル盤(1964年発売)。金色のレーベルで白抜きの犬とエンジェルのロゴがあるもの。

内袋は、3つとも異なっている。

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オリジナル盤と第二版盤はボックスは同じでハードカバーで表面はコーティングされており、裏面は黒い布張りで明らかにコストがかかっていて豪華である。しかし、第三版は表面がざらついたコーティングの無いもので箱の紙が薄くなり布張りではなく、明らかにコストダウンされている。

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また、解説書も異なる。オリジナル盤と第二版盤は30cm四方の豪華なものだが、第3版盤はA4サイズの小さなものになり、オリジナル盤と第二版盤には掲載されていた様々な写真などが省かれてしまっている。

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以下の写真は、第3版盤の解説書には無い。

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録音風景。オーケストラと歌手の立ち位置やマイクの立っている場所もわかる。歌手は左からワルター・ベリー(パパゲーノ)、ニコライ・ゲッダ(タミーノ)、クリスタ・ルートヴィッヒ、エリザベート・シュワルツコップ、マルガ・ヘフゲン(3人の侍女)

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オットー・クレンペラーと合唱指揮のウィルヘルム・ピッツ。

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グンドゥラ・ヤノヴィッツ(パミーナ)とワルター・ベリー(パパゲーノ)

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ルチア・ポップ(夜の女王)とゴットロープ・フリック(ザラストロ)

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アグネス・ギーベル(3人の童子の一人)、ルート=マルグレート・ピュッツ(パパゲーナ)とニコライ・ゲッダ(タミーノ) 休憩時のコーヒーブレイクの1コマ

こんな風に、オリジナル盤と第二版盤の解説書を見ていると、録音の様子がどんなだったのかもある程度わかる。

1964年は、フィルハーモニア管がニュー・フィルハーモニア管に変わった節目の年である。フィルハーモニア管のオーケストラはEMIの録音用のオーケストラだったが、実は、EMIのプロデューサーだったウォルター・レッゲが個人的に団員を雇って運営していた。それを経済的に運営が立ち行かない事を理由に一方的にレッゲが解散を宣言したのだが、この録音の後、1年もしないうちにクレンペラーと共に自主運営のオーケストラとして再出発しニュー・フィルハーモニア管となった。このゴタゴタのためにウォルター・レッゲと、オーケストラと団員を守り強くフィルハーモニア管の存続を希望していたクレンペラーは対立していて、この録音現場にプロデューサーのレッゲが入れないような状況だったらしい。ちなみにこの録音がEMIにおけるウォルター・レッゲの最後のプロデュースとなった。

この後、クレンペラーは、EMIに「ドン・ジョバンニ」、「フィガロの結婚」、「コシ・ファン・トゥッテ」の全曲録音をするが、この「魔笛」の素晴らしさが、EMIがクレンペラーにモーツァルトの主要なオペラを録音させようとした原動力の1つであった事は想像に難くない。


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コメント

先日クリーニング方法を教えていただいたものです、バキュームマシンには手が出せずデンターシステマを使いましたがなかなか効果ありです。この魔笛も購入、素晴らしい演奏、録音ですね、パパゲーノのアリアのグロッケンの響きには鳥肌がたちました。ちなみに私が買ったものは、一枚目が第3版、二枚目三枚目は第2版という変則的なものですね。特にEMIがCDよりよい音に感じるので食指が動きます。

投稿: おかち | 2017年5月13日 (土) 10時46分

輸入盤のオペラのセットには、1枚だけ他のと違う版のものが交じるものを良く見かけます。値段は安いですが、音は良いので、そういう盤を狙うのはアリです。

デンターシステマ、良さそうですね。私も使ってみます。

投稿: 黄金のアンコール | 2017年5月13日 (土) 11時49分

ちなみに、クレンペラー以外にもジュリーニのドンジョバンニやビーチャムのカルメンなど、EMIのUS盤を見かけますが音質は落ちるのでしょうか?

投稿: おかち | 2017年5月13日 (土) 12時19分

EMIのアメリカ盤は鮮明で明るいです。鮮明なので日本盤よりも良いと思います。

ただ、英国盤のようなしなやかでいて鮮明、という感じではないですね。あと、プレスの関係でサーフェスノイズが多いのが多いです。サーフェスノイズの一番少ないのは日本盤ですが、どっちを取るか、ですね。

投稿: 黄金のアンコール | 2017年5月13日 (土) 13時42分

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