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2022年6月17日 (金)

2chのステレオで高さは認識できるか?

歴史的に、録音時に2本のマイクを使い2トラックで録音したものを2本のスピーカーを使って再生させると音に広がりが出るとか、演奏者の位置関係がわかるようになる事は、戦前から知られていた。ステレオ録音というのは、立体録音という意味である。

1950年代始め頃まで、ほとんどの録音はモノラルで行われていて再生もスピーカー1本だったが、1954年にRCAとDECCAがクラシック音楽の商業録音で試験的にステレオ録音を開始した。それからはソフトを制作するレコード会社も、再生機器を販売するオーディオ機器業界もステレオ化というのは早かった。1960年代には民生用の機器もステレオ化がほぼなされた。

2chのステレオで高さは認識できるか?
高さを感じる2chステレオ録音のものはあまり多くない。高さを感じる音源に共通するのは、ミュージシャンが同時に同一会場で遮蔽板などが無い状況で、少ないマイクで録音場所の床や壁、天井の反射音も拾っているようなものに限定される。

愛聴盤の中で高さを感じるものを2点上げてみる。

2022年5月13日に亡くなったテレサ・ベルガンサのソルとマルティン・イ・ソレールの歌曲集

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音楽性、芸術性からみても素晴らしい録音なのはもちろんだが、オーディオ的には、クラシック・ギター1本の伴奏で女性歌手が歌を歌っているものだが、歌手の口の高さとギターの高さがちゃんとわかるように再生される。ヴォーカルの横のちょっと後ろにギターが定位して、そのギターはヴォーカルの口の高さより明らかに低い位置から聴こえて、歌手は立って歌いギター奏者は座って演奏しているように再生される。

ポップスのように歌手の口が中央ではなくやや左寄りに定位し、ギターは右側少し奥で高さはやや下側から聴こえる。自然で綺麗な適度なホールの残響も入っている。ポップスやジャズのように、ボーカルマイクは1つではなく、ホールで歌手と伴奏ギター同時に演奏しているところをありのままに近い状態で録音したものだと思う。
 

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これはフラメンコの音源。カスタネットの女王にしてフラメンコ・ダンサーだったルセロ・テナの足音は下から聴こえ、カスタネットは上の方から聴こえる。しかもダンサーがどのように動き回るのかも見えるようにわかるようだ。これも、ダンサー、歌手、ギターが同じ場所で同時に演奏し、少ないマイクで床や壁、天井の反射音も素直に捉えているから高さがわかる。この音源は、オーディオ・ショップの試聴会に持ち込んで、足音とカスタネットの高さの違いがわかる事を他の方にも確認してもらっている。

他には、残響の多い教会のホールで録音された合唱の録音とか、パイプオルガンの録音のものとかがあり、音楽が鳴り出すと部屋の壁が広く天井が高く感じるように聴こえるものがある。基本、少ないマイクで録音場所の床や壁、天井の反射音も同時に拾っているというのは共通している。残響を人工的に付加しているようなものや残響が無い音源は、高さを感じることは無理だと思う。

今はステレオ録音が当たり前の時代だが、ステレオ録音とは言っても左右に広がりが出て中央にヴォーカルが居るようなものがポップスでは多い。録音は先にドラムスやベースなどリズムを刻む楽器だけ録音し、それにギターやピアノ、シンセなどを後から追加ダビングするように録音したり、最近ではコンピューターに打ち込んで録音する。そういった音源は高さ情報は入らない。

位相をいじる事でバックの楽器がやや後ろから聴こえるように整えたりパンで振って位置決めをすることは出来ても、本当の立体的な録音になっていないものが多い。だから今のポップスの録音がダメだとは言わないけれど、2chのステレオで高さは認識できないと思っている人は、そういう音源しか聴いたことがないのだと思う。


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