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2023年5月 9日 (火)

マリア・カラスの『トスカ』2つのスタジオ録音全曲盤を聴き比べて

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フランス盤

マリア・カラス(トスカ ソプラノ)
カルロ・ベルゴンツィ(カヴァラドッシ テノール)
ティト・ゴッビ(スカルピア バリトン)他

パリ音楽院管弦楽団 パリ・オペラ座合唱団
ジョルジュ・プレートル(指揮)

【録音】1964年(ステレオ)

 

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英国盤

マリア・カラス(トスカ ソプラノ)
ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(カヴァラドッシ テノール)
ティト・ゴッビ(スカルピア バリトン)他

ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団
ヴィクトル・デ・サーバタ(指揮)

【録音】1953年(モノラル)

 

マリア・カラスの『トスカ』全曲盤のスタジオ録音は2つあり、1964年のステレオ盤と1953年のモノラル盤だ。音楽的には、1953年のデ・サーバタ盤には1964年のプレートル盤はかなわない。ステレオ盤の方はマリア・カラスの声が劣化しているというだけでなく、スカルピア役のティート・ゴッビもモノラル録音のほうがずっと良く、憎たらしいほどの凄みのある悪役を歌う。いずれも、通常CD、オリジナルに近いLPを所有して聴いているが、通常CDの音のボロさにはうんざりしている。ところがこれらのLPレコードは、相当に良い音質で聴ける。

音の良さは1964年のステレオ盤が圧倒的に良い。この当時の11年の差は、本当に大きい。どちらも名盤であるが、音楽的内容ではモノラル盤が良く、音質ではステレオ盤が遥かに優れる。

 マリア・カラスの声は1957年ごろから重くなって、それ以前よりも力で押すような歌い方をするようになっている。そして、ステレオでの『トスカ』録音の数年後には引退する。1923年生まれであるから、まだ、1964年当時でも40歳を少し超えたばかりなのになぜなのかは、カラスの声は本来はメゾ・ソプラノに適しているのに、コロラチューラソプラノが歌うようなものを歌い、驚異的な高域と普通のコロラチューラソプラノにはない劇的な力強さを持ち、さらに天性とも言える感情移入によってもたらされたものだからだ。そういう意味で、カラスに匹敵する歌手は今後は出現しない。

同じコロラチューラ・ソプラノでも、サザーランドやグルヴェローヴァが50歳を超えてもなお現役でコロラチューラの主役を歌える声を長く保ったのとは違う。カラスは高域をしぼりだして歌うような感じだから、当然無理があり、歌手としての寿命は短かった。また、カラスの声は決して美声ではない。でも、このような古い録音物であっても、鬼気迫るような感情移入が聴き手を感動させ、虜にするのだ。

 

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ステレオ録音の方は2012年12月にEsotericからSACD/CDハイブリッド盤が限定発売され、今までLPレコードでしか味わえなかった厚みのある歌声の実在感が再現されるようになり、またLPに比べ音場が広く、オペラハウスに居るような雰囲気みたいなものはEsotericのハイブリッド盤の方が感じられ、特にSACD層は相当に楽しめる盤となっていた。この時の発売は、カラスの『トスカ』、『カルメン』、カラヤンの『サロメ』、『アイーダ』の、4つのEMI音源のオペラ全曲盤をまとめたものがボックスとなっていた。だからカラスの『トスカ』だけを買うのは不可能だった。


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